やさしい日溜まりで揺れるビーチパラソル
胸ときめかす夏、昼下がり砂浜で波と追いかけっこ
遠くから優しいまなざしで見守るのは父の笑顔
いつも大きな背中を夢中で追いかけていた
追い越せそうで追い越せない　それは心の灯火
そんな父も今では過去の人

あの日の面影を探しに今日も海へ
通り抜ける心地よい潮風、磯の匂い
波の行方は鴎だけが知っている

幼き頃、大きく頼もしく見えた背中も
歳とともに小さく感じるようになった
生きてこその絆に突然のピリオド
現実を受け入れられず彷徨する我が心

波は今日も打ち寄せる　夢と現実の狭間で
人の心を弄ぶ
嗚呼、神はなに故の試練を与え給わんとして
愛しき人を我が元から連れ去るのか

ひとり海に佇み、涙の行方を見送れば
やがて陽は傾き、真っ赤な西空に遠き落日

夕闇が足早に迫り、誰もが家路を急ぐ
そよぐ南風　砂浜には　忘れ去られた護謨草履
やがて空には一番星　ひときわ輝くは父の化身か　
いつも天国から見守っていてくれる心の支え
夢熱く胸焦がし語ってくれた男の生き方そして優しさ
そんな父も今では光る星

あの日の記憶を辿りに今日も海へ
走り抜ける時間の片隅に追いやられたあの日の光景
心の行方は鴎だけが知っている

幼き頃、浜辺でキャッチボール　とり損ねた愛情
年とともに球威とスピードが衰えていった
煙草の煙にむせ返り、電話の声も弱くなった
これが現実　避けられない現実

いずれ自分も同じ運命　夢と挫折の狭間で
人の心は移ろう
嗚呼、神はなに故の未練を残して風と共に去りぬのか
愛しき者の御霊を鎮め、何処へと連れ去らん

瞳に焼きついた色褪せたセピア色の風景画
胸に抱いて今足を踏み出す　約束の地へと

波は今日も打ち寄せる　時と人との狭間で
まるで世の煩悩を消し去るように
嗚呼、神よ極楽浄土は何処にあるのか
愛しき人は今何処を旅していますか

輪廻転生　いつの日か生まれ変わっても
またあなたの息子でいさせてくれますか

今日もひとり海に佇み　あの夏の幻影を探している

Ｐｒｅｓｅｎｔｅｄ　ｂｙ　ＳＵＺＵ